【フツーに】 - 松のを治療院

義理の親父が喫茶店をやっていた頃、半年ほど手伝っていたことがありました。
肘を置くとちょうどいい感じに寛げるカウンターに7席、4人がけのテーブルが３つのこじんまりとした喫茶店。
やってくるお客さんは常連さんばかりでした。

来るたびに同じ話をしてくる町工場のオッチャン、競馬とパチンコの話しかできない屋根瓦のオッチャン、黙って新聞読みおえたらさっさと帰るしかめっ面のオッチャン、日常のささいな出来事にケラケラと笑って話すオバちゃん、マシンガントークで会話のキャッチボールもさせてくれないオバちゃん。
あまり変わりばえのないごくごくフツーの日常がそこに流れていました。

その頃のわたしは師匠に弟子入りしたてで、師匠のように勉強して人よりも優れていなくてはならない、もっと特別な人間にならなくてはと意気込んでいて、なにかと窮屈な生き方をしていました。
そんな時期に喫茶店へやってくるフツーにしているお客さんたちを見ていると「えっ、こんな感じでもいいんだ」と拍子抜けしてきて次第に肩の力が抜けてきました。

今はもうすっかり少なくなってきましたが、フツーに寛げる空間を提供している昔ながらの純喫茶といえる喫茶店が大好きです。

たまたま通りかかった道すがらにあった喫茶店を見つけて義父が元気にしていた頃を思い出しました。

もう叶うことはありませんが義父が作ってくれていたオムライスが食べたいです。
薄焼き卵に巻きこんでケチャップをかけたオムライス。